最高裁判所第二小法廷 昭和25年(れ)262号 判決 1950年7月07日
主文
本件再上告を棄却する。
理由
弁護人池辺甚一郎の上告趣意第一点について。
所論は明瞭でないが畢竟臨時物資需給調整法は憲法第二五条第一項に違反し無効の法律であるとして原判決における同法適憲の判断を攻撃するに帰着する。
然し憲法第二五条第一項の法意については既に当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第二〇五号、同年九月二九日大法廷判決)が示す通りであって、たとえ、具体的、現実的の場合において所論の如き不都合を生ずる虞れがあるとしてもその為に直ちに臨時物資需給調整法が違憲であるとは言えない。
されば原判決において、同法を以って適憲であると判断したのは相当であるから論旨は理由がない。
同第二点について。
臨時物資需給調整法に基く昭和二二年二月八日閣令第六号臨時建築等制限規則が数次の改正を経て現在においてはその制限が多少緩和されるに至ったことは所論の通りであるが被告人の本件所為に対してはその行為時法である臨時物資需給調整法第一条第一項第三号、第四条及び同法に基く右臨時建築等制限規則第二条第一四条の適用があることは臨時物資需給調整法附則第二項昭和二三年八月三一日建設省令第二号臨時建築制限規則附則第三項及び第二四年六月三〇日同省令第九号(右臨時建築制限規則の全部を改正する省令)附則第二項の各規定に徴し洵に明らかである。然らば被告人が本件所為に対する刑責を免れ得ないことは勿論であって所論違憲の主張は、既にその前提において誤まれるものといわなければならない。従って論旨は理由がない。
よって刑訴施行法第二条旧刑訴第四四六条により主文の通り判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)